検診

肺がん検診は受けた方がいい?②

 前回「肺がん検診は受けた方がいい①」では、「胸部レントゲン検査での肺がん検診にエビデンスがない」ことを確認しました。

 今回はそんな肺がん検診の奥の手「肺がんCT検査」の有効性について解説していきます!

 「肺がんCT検査」について、ズバリ著者の考えとしては….

結論

お金に余裕があったら受けた方がいい

理由

一部の大規模研究で肺がん死亡室の減少が証明されているか

論文紹介

 「結局お金の問題かいっ!!」と思うでしょうが、一部の研究ではCT検査の有用性が証明されていることは間違いありません。ではなぜ自信をもってまではオススメできないのか、そこには ①コスト面、②この論文の落とし穴 の2つの理由があります!

 一般的に肺がんCT検査は人間ドッグの有料オプションとして10,000〜20,000円前後で受けることが可能です。馬鹿にできないこの金額を支払うだけのメリットがあるのか無いのか、一緒に考えていきましょう!!

 今回紹介する論文は、お馴染みのトップジャーナル「the NEW ENGLAND JOURNAL of MEDICINE」から2011年に発表された大規模研究を紹介いたします‼︎

対象

2002年から2004年まで、肺がんリスクの高い53,454人を対象とした

グループ分け

単純CT検査(26,722人) VS 胸部レントゲン検査(26,732人)

評価項目

2009年時点での、肺がん発症率および肺がん死亡率

結果

単純CT検査群で、肺がん発症率の有意な上昇を認めた

また、肺がん死亡率および総死亡率の有意な低下も認めた

考察

 胸部レントゲン検査とは異なり、胸部CT検査では肺がん発見率と肺がん死亡率の両方を改善し、さらには総死亡率(他の病気も全て含めた死亡率)も改善されるという素晴らしい結果が得られました!

 「じゃあ全国民にCT検査を推奨しよう!」…とは言い切れないのが医学の難しいところです。一つは前述した通り10,000〜20,000円という「コスト面」ですが、さらに重要なのが「この論文が本当に妥当なのか?」という点です。

 この論文には以下のような「ツッコミどころ」があります

 本当に一般市民に当てはまるの?

 この研究の対象は 30 pack years= 20本/日を30年間吸い続けた人たちなのです。

 この研究中の肺がん死亡率はCT群 19.0%、レントゲン群 22.2%となっているが、これは日本人平均の8%の2倍以上の数値。端的に言うと、「ヘビースモーカー軍団ならこの結果が当てはまるけど、タバコ吸わない人にも同じことが言えるの?」ということです。

 ●総死亡率の低下が偶然かもしれない

 実はこの研究、「肺がん以外による死亡率」もCT検査群の方が低くなっています

 対象者は受ける検査の種類が違うだけなので、理論上は「肺がん以外による死亡率」に差は生まれないはずですよね?本研究は53,454人を対象とした大規模研究であり信頼性はかなり高いですが、「偶然による死亡率の差」が発生してしまった可能性は否めません

 

 結論、CT検診はレントゲン検診と比較すると有効性が高いことは間違いありませんが、高いコストと医学的エビデンスを考慮すると定期検診になるまでは及びません

 もし読者の方がヘビースモーカーで、さらに金銭面の折り合いがつきそうなのであれば受ける価値はかなり高いと思います!

 世界で最も権威ある雑誌「NEJM」に掲載される完成度の論文でも、このような「ツッコミどころ」があるのが、医学の難しくも面白い点ですね☺️